概要#
障害年金は、日本の公的年金制度の一つであり、病気やけがによって生活や仕事に支障が生じた場合に、所定の要件を満たした者に対して支給される年金である。現役世代を含め、年齢に関わらず受給資格がある点が老齢年金や遺族年金と異なる特徴を持つ。
歴史・背景#
日本の公的年金制度は、第二次世界大戦後の社会保障制度の再編の中で形成された。1942年には労働者年金保険法が制定され、これに障害年金の原型となる制度が組み込まれた。戦後、1959年に国民年金法が制定され、1961年に施行されたことにより、全国民を対象とする年金制度が確立された。この国民年金制度の中に、国民年金に加入している者が対象となる障害基礎年金が位置づけられた。
その後、1985年の年金制度改正では、障害基礎年金の支給対象が拡大され、20歳前の傷病による障害者にも支給されるようになった。また、厚生年金保険や共済年金に加入していた者が対象となる障害厚生年金、障害共済年金も整備され、公的年金制度全体として障害に対する保障が強化されていった [1]。2015年には、共済年金が厚生年金に一元化されたことに伴い、障害共済年金は障害厚生年金に統合されている。
主要な内容#
障害年金は、その根拠となる年金制度によって大きく以下の2種類に分けられる。
障害基礎年金#
主に国民年金に加入している者、または加入していた者が対象となる年金である。自営業者、学生、無職の人などが該当する。以下のいずれかの要件を満たす場合に支給される [2]。
- 被保険者要件: 初診日(障害の原因となった病気やけがで初めて医師の診察を受けた日)において、国民年金の被保険者であること、または日本国内に住む60歳以上65歳未満で国民年金に加入していなかった期間があること。
- 保険料納付要件: 初診日の前日において、保険料納付済期間(保険料免除期間を含む)が被保険者期間の3分の2以上あること。または、初診日が2026年3月31日までの場合は、初診日の前日において直近1年間に保険料の滞納がないこと。
- 障害認定日要件: 障害認定日(初診日から1年6ヶ月を経過した日、またはそれ以前に症状が固定した日)において、政令で定める障害等級(1級または2級)に該当する状態であること。
- 20歳前傷病: 20歳前に初診日がある場合は、保険料納付要件は問われず、20歳に達した日(または障害認定日)において障害等級1級または2級に該当すれば支給対象となる。ただし、本人の所得による支給制限がある。
支給額#
障害基礎年金の年額は、障害等級によって定められている。
- 1級: 795,000円 × 1.25 + 子の加算
- 2級: 795,000円 + 子の加算
子の加算は、生計を維持している18歳到達年度の末日までにある子、または20歳未満で障害等級1級・2級の子がいる場合に加算される。
障害厚生年金#
主に厚生年金保険に加入している者、または加入していた者が対象となる年金である。会社員や公務員などが該当する。障害基礎年金の要件に加え、以下の要件を満たす場合に支給される [3]。
- 被保険者要件: 初診日において、厚生年金保険の被保険者であること。
- 障害認定日要件: 障害認定日において、政令で定める障害等級(1級、2級または3級)に該当する状態であること。
障害厚生年金は、障害基礎年金に上乗せして支給される。障害等級3級の場合は、障害厚生年金のみが支給される。また、障害手当金という一時金が支給される場合もある。
支給額#
障害厚生年金の年額は、平均標準報酬月額や被保険者期間等に基づいて計算される。
- 1級: 障害基礎年金(1級)+障害厚生年金(報酬比例部分の1.25倍)+配偶者の加給年金
- 2級: 障害基礎年金(2級)+障害厚生年金(報酬比例部分)+配偶者の加給年金
- 3級: 障害厚生年金(報酬比例部分) ※最低保障額あり
配偶者の加給年金は、生計を維持している65歳未満の配偶者がいる場合に加算される。
障害認定基準#
障害年金における「障害」の認定は、障害認定基準に基づいて行われる。これは、身体の機能の障害または精神の障害の状態を医学的見地から判断し、その障害が日常生活や労働にどの程度影響を及ぼすかを評価するものである [4]。 主な障害の種類としては、以下のものが挙げられる。
- 眼の障害
- 聴覚、鼻腔機能、平衡機能、そしゃく・嚥下機能、音声・言語機能の障害
- 肢体の障害
- 精神の障害(うつ病、統合失調症、発達障害など)
- 神経系統の障害
- 呼吸器疾患の障害
- 循環器疾患の障害
- 腎疾患、肝疾患、糖尿病の障害
- 血液・造血器、その他の障害
- 悪性新生物による障害
これらの障害は、診断書や病歴・就労状況等申立書などの提出書類に基づいて審査される。
請求方法#
障害年金の請求には、原則として以下の2つの方法がある。
- 障害認定日請求: 障害認定日において障害の状態が固定していると判断された場合に請求する方法。
- 事後重症請求: 障害認定日時点では障害等級に該当しなかったが、その後症状が悪化し、65歳に達するまでの間に障害等級に該当する状態になった場合に請求する方法。
いずれの請求方法においても、初診日の証明、診断書、病歴・就労状況等申立書、戸籍謄本など、複数の書類の提出が必要となる。請求先は、国民年金のみの場合は市区町村役場の国民年金担当窓口または年金事務所、厚生年金に加入していた場合は年金事務所となる。
関連事項#
障害者手帳との関係#
障害年金と障害者手帳(身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳)は、目的や所管が異なる別の制度である。障害者手帳は、障害の程度に応じて様々な福祉サービスや割引制度を利用するためのものであり、地方自治体が所管している。一方、障害年金は、生活保障を目的とした国の年金制度である。したがって、障害者手帳を所持していても障害年金が受給できるとは限らず、また、障害年金を受給していても障害者手帳を所持していない場合もある [5]。ただし、両制度の認定基準には関連性があり、障害者手帳の等級が障害年金の審査において参考にされる場合もある。
労災保険との調整#
業務上または通勤途中の事故や病気によって障害が生じた場合、労災保険から障害補償給付が支給されることがある。労災保険と障害年金は別個の制度であるが、同一の傷病に対して両方から年金が支給される場合、調整が行われることがある [6]。具体的には、労災保険の障害補償年金が優先され、障害年金の一部が停止される場合や、一定割合で減額される場合がある。
障害年金専門の相談機関#
障害年金の制度は複雑であり、請求手続きには専門的な知識が必要となる場合が多い。このため、年金事務所や市区町村の窓口のほかにも、社会保険労務士などの専門家が障害年金の相談や申請代行を行っている。また、NPO法人やボランティア団体が、障害年金に関する情報提供や支援活動を行っている場合もある [7]。
脚注
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