概要#
高杉晋作(たかすぎ しんさく)は、幕末の長州藩士である。奇兵隊など諸隊を創設し、長州藩の討幕運動において重要な役割を果たした。奇抜な発想と行動力で知られ、明治維新の実現に多大な貢献をしたが、若くして病没した [1]。
歴史・背景#
生い立ちと教育#
高杉晋作は、天保10年8月20日(1839年9月27日)、長門国萩城下(現在の山口県萩市)に、長州藩士高杉小忠太の長男として生まれた [2]。幼少期から聡明で、藩校明倫館で学んだ後、1857年(安政4年)には江戸に出て、吉田松陰が主宰する松下村塾に入門した [3]。松下村塾では、久坂玄瑞、吉田稔麿、入江九一らとともに「松下村塾の四天王」と称されるほど、松陰から大きな影響を受けた。松陰からは「周旋の才あり」と評され、その非凡な行動力を見抜かれていた [4]。
尊王攘夷運動への参加#
松下村塾で学んだ高杉は、尊王攘夷思想に深く傾倒していく。1861年(文久元年)には、藩命により長崎へ赴き、西洋の軍事技術や文化に触れた [5]。翌1862年(文久2年)には、幕府の遣欧使節団の一員として上海へ渡航し、欧米列強によるアジア諸国の植民地化の現実を目の当たりにする [6]。この経験は、日本が独立を保つためには、速やかな富国強兵と攘夷の実行が必要であるという彼の信念を一層強固なものとした。帰国後、彼は久坂玄瑞らとともに、イギリス公使館焼き討ち事件など、過激な攘夷活動に参加した [7]。
主要な内容#
奇兵隊の創設#
1863年(文久3年)、長州藩は関門海峡で外国船砲撃事件を起こし、これに対し米仏蘭英の四国連合艦隊による下関戦争が勃発した [8]。この危機的状況の中、高杉晋作は身分を問わず有志を募る画期的な軍事組織である「奇兵隊」を創設した [9]。奇兵隊は、武士だけでなく、農民、町人、さらには僧侶や浪人など、多様な身分の者が参加し、西洋式の軍事訓練を取り入れた画期的な部隊であった。高杉は初代総督として、この新しい組織を率い、下関戦争での防衛戦や、その後の長州藩内の政治的抗争において重要な役割を果たした。奇兵隊の創設は、旧来の封建的な身分制度に囚われない、新しい時代の軍隊のあり方を示唆するものであった [10]。
功山寺挙兵と藩政の奪還#
1864年(元治元年)の禁門の変(蛤御門の変)での敗北や、その後の第一次長州征討により、長州藩内では幕府に恭順する保守派が台頭し、高杉は藩を追われ、潜伏を余儀なくされた [11]。しかし、彼は諦めず、1865年(慶応元年)には功山寺(こうざんじ)で挙兵し、保守派を打倒して藩論を再び討幕へと転換させることに成功した [12]。この功山寺挙兵は、わずかな兵力で大勢を覆した奇跡的な勝利として知られ、高杉の卓越した戦略眼と指導力を示すものとなった [13]。
薩長同盟と幕府との戦い#
藩政を掌握した後、高杉は木戸孝允(桂小五郎)らとともに、藩の軍制改革を推進し、近代的な軍備を整えた [14]。そして、1866年(慶応2年)には、坂本龍馬の仲介により、長年の敵対関係にあった薩摩藩との間で薩長同盟を締結させた [15]。この同盟は、幕府を倒すための決定的な転換点となった。同年、幕府による第二次長州征討が開始されると、高杉は海軍総督として、長州藩軍を指揮し、幕府軍を各地で撃破した [16]。特に小倉口での戦いでは、わずかな兵力で幕府軍を圧倒し、その軍事的才能を遺憾なく発揮した。
関連事項#
病没#
高杉晋作は、幕府との戦いの最中、結核に冒され、慶応3年4月14日(1867年5月17日)に下関において27歳で病没した [17]。彼は明治維新の実現を目前にして世を去ったが、その行動と遺志は、多くの志士たちに受け継がれ、維新の原動力となった。彼の死は、西郷隆盛をして「おもしろき男を死なせし」と嘆かせたという [18]。
評価と影響#
高杉晋作は、その奇抜な発想と行動力、そして卓越した軍事戦略によって、幕末の動乱期に大きな足跡を残した。彼は身分制度に囚われず、能力主義に基づいた軍隊を組織し、旧態依然とした幕府軍を打ち破ることで、新しい時代の到来を告げた [19]。その思想や行動は、後世の日本の政治家や軍人たちにも影響を与え、革命家としての評価が高い [20]。
脚注
- 田中彰「高杉晋作」『日本史大事典 第4巻』平凡社、1993年、ISBN 978-4-582-13204-4。↩
- 一坂太郎『高杉晋作』PHP研究所、2002年、ISBN 978-4-569-62325-1。↩
- 吉田松陰「松下村塾記」『吉田松陰全集』岩波書店、1938年。↩
- 『松下村塾入門記』。↩
- 高杉晋作「航海日誌」『高杉晋作全集』。↩
- 佐々木克「高杉晋作と上海」『幕末維新の群像』吉川弘文館、1998年、ISBN 978-4-642-07505-1。↩
- 井上馨「回顧録」『井上馨侯伝』。↩
- 『長州藩外国船砲撃事件記録』。↩
- 『奇兵隊日記』。↩
- 大江志乃夫『奇兵隊と明治維新』岩波書店、1989年、ISBN 978-4-00-430070-5。↩
- 『禁門の変記録』。↩
- 『功山寺挙兵始末』。↩
- 童門冬二『小説高杉晋作』学研、1999年、ISBN 978-4-05-401140-5。↩
- 『木戸孝允日記』。↩
- 坂本龍馬『船中八策』。↩
- 『第二次長州征討記録』。↩
- 『高杉晋作病床日記』。↩
- 『西郷隆盛言行録』。↩
- 宮地正人「高杉晋作の軍事思想」『幕末維新史の研究』。↩
- 渡辺京二『高杉晋作』中央公論新社、2012年、ISBN 978-4-12-004381-0。↩
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